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昭和から平成にかけての手帳版下の作り方②

こんにちは、渡辺です。

前回の「昭和から平成にかけての手帳版下の作り方①」の続きです。

手帳本文には文字だけではなくイラストやロゴなど文字以外のものも当然入ります。イラストやロゴを入れる場合は、その版下も作らなければなりません。その版下はデザイナーにたのみトレーシングペーパーに※ロットリングと言う万年筆のようなペンで手書きをしてもらい作っていただきました。

ロットリング… 長い線をぶれずに引くことができる精巧なペン先の口金、一定量のインクが出続ける製図に適した万年筆。

また、ある雑誌からの写真を版下として使用したい場合は「紙焼き機」という暗幕で囲まれた機械を使用して版下を作りました。紙焼き機の紙とは以前もお話しました、印画紙のことで印画紙に画像を焼き付けるための機械です。

その使用方法はまず、機械のある暗幕の中に入ります。版下にしたい写真等を機械の透写台に置き、ふたをします。その時に拡大、縮小が出来ますのでパーセントを決めてスタートボタンを押します。

数十秒後に拡大縮小された写真が印画紙に焼かれて出てきます。これらの一連の作業はすべて暗幕の中で行われていたので、夏場などは機械自体が熱を発していたため、汗を掻きながら作業した記憶があります。その後は紙焼き機が進化して小型化されたので暗幕が不要になりました。

我が社には全国鉄道路線図が入る手帳があります。路線図の版下を作る場合も大変な苦労がありました。我が社の場合は、トレーシングペーパーにロットリングで路線を描き、駅名などは写植で印画紙を作り、1駅1駅印画紙を貼って全国路線図の版下を作りました。

当然のことながら一年間の内に路線が増えたり、駅名が変更したりしますので、その度にロットリングで路線を足したりして修正を加えました。駅名の文字などは重ならないように貼らなくてはなりませんので、文字を平体にしたり、長体にしたりと工夫をして貼りました。版下自体が縦横2,3ミリという小さいものもあったので、くしゃみでもしたら飛んで無くなってしまうこともありました。また、印刷は3色刷りだったので、同じ地域でも色の違いだけで同じ地域の版下を3枚作りました。

当時は全国鉄道路線図の版下を持っている会社は少なく、我が社の全国鉄道路線図の入った手帳を見た会社は、版下を貸してほしいと電話をしてきました。

また、版下には線を引く作業もありました。今ではパソコンで0.1ミリからの自由な線を何センチも引くことができますが、版下時代はロットリングを用いて手で線を引きました。

1センチ引くだけでも一定の筆圧を保たなければ、線の太さにむらができてしまいます。私はこの線を引くことにとても苦労しました。

ある時、家の見取り図を掛かれている会社を訪問した時、手書きで無数の線を描いている人を見ました。さすが職人技だと思いました。

 今では職人技を必要とすることが少なくなり、いかにソフトを上手く使いこなせるかが求められているような気がします。

 もし、今同じ作業をしろと言われたら、できないと思います。できたとしても時間が相当掛かるでしょう。